2023年に読んでいたマンガ作品備忘録

昨年はこちら。

dismal-dusk.hatenablog.com

 

読んだ媒体ごとに分け、読んだのが昔である順に挙げていきます。特に感想がないもの、様々な理由から評価できないと思ったものは含まれていません。

なお明らかなR18レーベルの作品はリンク貼ってないので、18歳以上の方は自分で検索して見つけてください。

 

SLAM DUNK(スラムダンク) 完全版 全24巻

全24巻。映画があり、かなり話題になっていましたね。6章くらいで結構えげつない暴力シーンなどがあり、半分ヤンキーマンガじゃないかと思っていました。でもやっぱり一人ひとりにちゃんと背景があるのがわかりました。安西先生が一年に対して思うこととか花道が喧嘩やめた理由とか。そういう人間ドラマ的な側面ばかり見てしまう。

 

モアザンワーズ

全2巻。男同士のカップルとその親友の関係の話だった気がするのですが、複雑だったので詳しいところは記憶せず。なんで代理出産するみたいな話になったんでしたっけ……

 

花と落雷

全2巻。キャラが多いから少し描き切れてない感ありましたが、やはり渡辺カナ先生の作るモノローグは突出してよいと思いました。特に恋愛に興味ないある人物の「玉ねぎが嫌いでも困ってない」という喩えは非常に良かったです。まあ物語の展開的にはそれを裏切るような気がしてますが。

 

星屑クライベイビー

全1巻。4つの短編どれも、渡辺先生のロジカルかつ繊細な言葉が冴え渡る非常にレベルの高い作品です。ゲイの友だち、恋愛しない人、悪口の身近さ、権利意識などのテーマが散りばめられているのも特徴で、少女漫画ってヘテロ恋愛至上主義で無思慮な暴力・暴言のオンパレードでしょ、と思ってる頭ゼロ年代の人は今すぐこれを読んでください。

 

問題のない私たち

全3巻。原作は小説らしいです。これぞゼロ年代初期といった感じの話でした。1巻は生徒同士、2巻はVS教師でのいじめ合戦ものです。すえのぶけいこ『ライフ』などの系譜です(もしかするとこれが源流?)。いじめていた側がいじめられる側に反転する、学級崩壊描写など全体的に殺伐としています。

なんにしても、「やられたらやり返す」は解決法にはならず、憎しみに駆られる主人公が(マリアというキーキャラクターによって)人情を取り戻す、という慈悲が事態を終結させる型があります。これを読んでいたとき『機動戦士ガンダムSEED』を見ていて、なんとなく通ずるものを感じました。

3巻はそれまでとまったく違った物語になります。今でいう毒親の母のもとで育ち、リストカットをする後輩にどのように接するのか主人公が問われるという話です。リスカ描写が異常に丁寧で恐ろしさを感じました。

 

 

アリスの星

全2巻。男子への絶望から始まるのが特異な感じしました。その割にはあっさり克服してしまうんですが、「男子の中にも話せる人はいる」という言葉をはっきり提示しているのは良かったです。途中、いとこの弟の接近はなかなか攻めてると思いました。まあ兄妹よりは有りなのか、よくわかりませんが。

 

 

ラブロマ

全5巻。『ディアティア』+『日常』みたいな、独特の雰囲気を持つ漫画でした。割とぶっ飛んだ性格の主人公ですが、ときおり普通の高校生男子みたいな顔になるのがちょうどいいのだろうと思いました。もう少し人間関係が派手に荒れたほうが自分は好みですが、とても丁寧に心情が描かれていました。

 

 

ヲタクに恋は難しい

hesperas-drafts.blogspot.com

全11巻。毛嫌いしていた作品でしたが、読んでみれば色々と学ぶこともありました。

 

 

超獣伝説ゲシュタルト

全7巻。途中で設定が覆されたり、突然壮大な宗教とか出てきたり、場所を行ったり帰ったりで話の見えなさがヤバいですが、6巻で自暴自棄になった王理の描写とそれに付き合うシャザーンの関係はすごいよかったと思います。ファンタジー世界でここまで(他人への執着で)自傷的になった人を見たことがない。何らかの意味で偏執的じゃない人がいない作品ですが、スズの人物像が唯一近づきやすいので助かりました。

 

 

りびんぐゲーム

全7巻。色々と語り口のある作品でしょうが、不破と時子の距離感が素敵だと思いました。多分この国で全島的にポリアモリーが主流だったことはないので、かなり攻めた距離のとり方だったと思いますが、婚姻状況や男女の壁を超える非性的なつながり、腐れ縁と呼ぶにふさわしい表現がこの時代にすでにあったことに驚きを感じます。

二人の過去はほとんど具体的には描かれませんが、なんとなく同じ道を目指し、決裂し、色々あってそれぞれの道を行きながら無縁になることもないという人たち。それが希望ではないかと思わされます。

 

 

雲一族と泥ガール

全3巻。最初は人情と庶民的生活術で事態を押し切る伝統的な主人公かと思いました。が、2巻で「お母さん」役をやめる際の精神的危機がクローズアップされたので流れ変わったなと。支えるものは支えられているというケアの話……

しかし最終的な話の畳み方はいろいろと納得できません(打ち切りだったという噂もあります)。主人公の精神的危機、そこで不器用ながらも寄り添おうとする玻璃が描かれる2巻がクライマックスだったのではないかと思います。

 

 

ラバーズハイ ~親友の彼氏とマッチングしてしまった~ 

全2巻。この物語、2巻のあるシーンがなければ「よくある話」で済んだのですが、そのシーンのために他作品から区別されます。こういうキャラクター造形もありか、と新鮮に感じました。

就職直前の人たちの話なので、仕事描写が割と意味のあるものになっていてTLと少女漫画の間をつなぐような立ち位置です。しかし、どんな男に執着するのも(他人に迷惑にならない限りで)個人の自由というのは完全に『九月病』の頃のシギサワカヤ哲学ですから、それは承知の上読むべきです。

 

Kindle(途中まで)

ガチ恋粘着獣

3巻まで(既刊12巻)。「ガチ恋」をここまでセンセーショナルに描かれるとさすがに大げさなのでは? と思いもしますが、ディテールの細かさから徐々に実話のような気がしてくる怖い話です。私のそれまで持っていた「推し」文化の静謐なイメージからは考えられない激しさがこの作品にはあり、これはもはや令和の純愛と呼ぶべき領域なのだろうととらえています(「純愛」という言葉の時代遅れ感)。

男性向けジャンルで言われてきた「ヤンデレ」と交差するようなイメージも散見されるのですが、ケア能力ではなくモノと金銭によって相手との関係の濃さを証明しようとするところが時代だなあと思わされます。てかYouTubeの課金機能が諸悪の根源なのでは。

 

塔子さんはいい大人じゃいられない

1巻まで(既刊3巻)。表情に乏しく誤解されがちなデザイナーが主人公。高校生男子が相手というのはまあ気をつけるべき最低ラインはクリアしています。仕事描写はそれなりに細かい。しかしなぜ高校生がマッチングアプリを? というところを明らかにしてほしいです。

 

僕らは恋がヘタすぎる

1巻のみ(全7巻)。突飛なことはせず、割と堅実に関係をごチャつかせていて好印象でした。主要人物の一人である歩の過去は悲しかった。親友だからこその息苦しさを描いた終盤は割と珍しく、女性同士の和解を後ほど見てみたいです。

 

山田くんとLv999の恋をする

1巻まで(既刊7巻)。ギャグ比率高めだけど結構面白かった記憶があります。山田が割と本気で塩対応なのがよい。少女漫画にはこういう系統のものもあることを思い出しました。前述『ラバーズハイ』の某キャラクターもそうでしたが、インドアっぽい才能ある人は塩対応気味というステレオタイプがある気が。

 

 

こじらせヤクザは幼馴染

1巻のみ(全4巻)。ヤクザものには詳しくないのですが、血の付いた衣服の処理の仕方、法律改正により警察とは戦えない状況など、細かな部分はちゃんと押さえていた感じがしました。しかしスムーズに同居に移ったり、すぐにヤッたりというところはちょっとファンタジー入ってます。絵柄的に違和感があるのですが、フレームワークはややテンポの速めなTLなのでしょうか。

 

もし あなたが奪うなら

1巻まで(全3巻)。経験ない人の事前のシャワーの場面の不安がちょっとリアルでした。後輩女性、自分で手を下すのではなくて他人の欲望を煽って主人公を陥れるというのが凝っていて普通に怖かったです。話の建付け的には新しくないですがこういう話もまだ生まれ続けてるのだなと思っています。

 

ふつつかな悪女ではございますが

1巻まで(既刊6巻)。設定が細かい中華ファンタジーです。登場人物の衣装の構造や髪型の結い方が付録として載っていたのが凄すぎると思いました。真っ直ぐで泥臭さを嫌わない、身分に頓着しない強さは花とゆめ系の主人公に通ずるところがあり、興味深いです。

 

私の推しは悪役令嬢。

1巻まで(既刊7巻)。最初はともするとネタで百合をやってる感もあったのですが、主人公の本気の行動や二人の内面の描写が積み重なることにより、ゲームキャラだったクレアが本当に一人の人間として魅力的に見えてくるから不思議です。主人公が先の展開を知ってるということは未来から来た人間のようなもので、ループものの主人公とも共通点があるように思います。

 

私たちが恋する理由

1巻まで(全4巻)。エロは無しです。主人公の距離の取り方が慎重で、真面目で現代っぽい職場恋愛ものだと思いました。対照的に身長差カップルの話は非常にほのぼのしている。職場恋愛ものの緊張感についてはまとめて書きたいと1年中言っていながら結局書けなかったことを思い出しました。

 

喧嘩ばかりだった婚約者がいきなり溺愛してきます

3話まで(既刊2巻)。素直になれず婚約者にツンツンしてしまう主人公が階段から落ちて目が覚めると、婚約者との仲が円満ということになっており(主人公はその間の記憶がない)、なぜか婚約者は素直でめちゃ恋人扱いしてくるという話です。

原作が小説だからかモノローグが多く繊細で、作画の人もモノローグを画面に落とし込むのが非常にうまい。話の速度はゆっくりで正直もどかしいのですが、この丁寧さなら先を読みたいとも思えます。

 

贄姫と獣の王

1巻まで(全15巻)

獣人と人間が対立している世界で、実はハーフの王が人間の姫を迎える話。テイルズオブリバースみたいな世界だなと思います。さすが花ゆめ、設定が割と重厚です。

最後の方で側室を迎えるとか夜這いっぽい場面があり、えこれ主人公にとってのNTR展開あるんすか? と面くらいました。まあ王宮の話だからある意味令嬢物とかに通じていなくもないのでしょうが。クリフハンガー的な引きだと思うので次に行けばいいんですが15巻と比較的長いので躊躇しています。

 

この恋は事故です!―副社長と私のワケあり同居生活―

1巻まで(全3巻)。死ぬほどありがちな導入でしたが、入れ替わりという比較的レアな展開が意外と面白いです。副社長の適応力の高さは異常。痴漢とか社員への態度とか、やはり立場ごと入れ替わらないと見えてこないことは山程あるのだろうと思います。流石に入れ替わったままで通常勤務は難しいだろと思うのですが、今後が気になります。

 

ほむら先生はたぶんモテない

2巻まで(全5巻)。めちゃくちゃ自覚的にメタ少女マンガをやろうとしており、少女マンガの直情的な部分に明確にノーを突きつけています。何ができて何ができないか、地道に考え続ける主人公が報われてほしいと単純に応援したくなります。まあ読者にはすべて見えているからある意味安心感もあるのですが。

 


大人にゃ恋の仕方がわからねぇ!(旧題:セックスご無沙汰、卒業します。)

3話まで(既刊7巻)。絵柄やコマ割りは正直嫌いですが、男の方にモテ術を客観視して説明できるというクセがあって、独特の空気を作れていると思います。実写ドラマ化に際しタイトルが変更されたとか。ドラマの題って「セックス」とか入れてはいけないのだろうか。

 

敵に恋する月曜日

2巻まで(全4巻)。今年読んだ仕事ものの中では一番読む負荷が高いものだと思います。仕事もプライベートも頑張ろうとしているのにうまく行かない描写が良い意味でコミカルではなく、真剣なのが本当につらい。

この話ではだれかの説教ではなく主人公の自省によって「会社組織に長くいて成果主義に染まった結果、人の事情を汲むことができなくなる」ことが読者に理解させられます。各人そこまで反省しなくともいいのではないかと思いつつも、癒しのジャンルらしからぬ作品が電子限定で突如出てきたことには面白さを感じます。「まんが王国コミックス」は、配信サイトの「まんが王国」運営元の株式会社ビーグリーによるレーベルのようです。

 

ヨモギ先生はセックスが知りたい!

1巻まで(全2巻)。ツッコミどころが多すぎる設定なのはともかく、主人公が飄々としたちょっとアロマンティック風の女性なのが特徴的でした。また、服をすべて友人に任せて全く興味を持っていなかったり、ゴミ出せなかったりボサ髪だったりという部分で割と共感は得られるのではないでしょうか。しかし弁当自作とかのテンプレすぎるエピソードはいらなかったかなとも思います。相変わらずTL漫画の男は家事能力が高い……

 

まほろまてぃっく【新装版】

3巻まで(全8巻)。なんとなく読み始めましたが、割とシリアスでバイオレンスです。目的不明の異星人の襲来とそれへの対抗組織などは、エヴァとかセカイ系作品っぽいですね。主人公が両親を失っていること、そこに対する周囲の優しい視線など描写の繊細さが心に染みます。ヒロインの事情は余命もの、難病ものとの共通点もあり、どのように終わりを迎えるのか気になります。

 

しゅごキャラ!

5巻まで(全12巻)。「キャラ」について考える評論などを読んでいるうちタイトルがよく挙がるので読んでみました。自分の内心と、他人によるその解釈に齟齬が生まれることによって不本意なキャラが立ち上がる過程がよくわかります。恋愛要素はわりと控えめだった印象があります。ストーリーや心理描写というよりは、様々なキャラなりの意匠をイラスト集のように楽しむことが多いです。

 

 

バツイチがモテるなんて聞いてません

1巻まで(全3巻)。

冒頭の離婚をするシーンがかなり厳しい感じでよかったのですがそれ以降はあんまり印象に残っていません。後輩のお世話をしていく場面が多いですがあまり職場恋愛の緊張感とかそういう話でもなかったような。エロはありません。

 

 

乙女椿は笑わない

1巻まで(既刊10巻)。時ならぬ絵柄な気がしますが、堅実な面白さがあります。主人公が落ち着いていて好感が持てる人なのがよい。アマゾンでの評価も高いようで、現代の読者のたしかな審美眼を感じました。

 

 

うちの弟どもがすみません

1巻まで(既刊11巻)。他人といきなり同居することになるという展開は恋愛漫画ではよく見られますが、実際それってめちゃくちゃ大変なことなので、長く続く話ならその大変さをちゃんと描いてほしいと常々思っています。この作品は同居の難しさをかなり丁寧に描いている印象でした。

 

 

アトピーだけどHできますか?~僕がたくさん愛します!~

2話まで(既刊11巻)。珍しいテーマです。短いページにまとまっているのでかなり駆け足ですが、アトピー性皮膚炎の方がどのような点に苦労したり抵抗を感じるかが豆知識的に書かれてはいます。知ることのきっかけになりました。

 

淫魔くん!私とエッチしませんか?~こじらせ同士が理性を脱いだら

2巻まで(既刊4巻)。(はてなブログの基準的にも)ちょっと大丈夫かと思うようなタイトルですが、とても工夫された作品です。男(淫魔)のほうはセクハラ発言を許さず、何らかの事情から女性と距離感を確保しようとしているのが伺え、TLのよくあるマッチョな人物像とは差異化が図られています。逆に主人公は思い切ってて気持ちがいいです。ファンタジー設定が前景化してきてもこの感じで続いたらいいですね。

キレないでください(1巻22ページより)

 

婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む

1巻まで(既刊7巻)。なぜ読み始めたのか定かでないんですが、見かけ以上に尖った話でした。自己卑下の激しい令嬢を天才魔導士の男がひたすらに甘やかすという筋ですが、自分を大切にしていいということを手を変え品を変え色んな言動で伝えようとするのが終始論理的でカウンセリング感があります。なんだか女の子救う系の昔の美少女ゲームを思い出しましたが、しかしそれらだってこの作品ほど男が体を張っていたものがあったかどうか。また、魔法で傷を癒せるとしても「アレンさんが痛い思いをしたという事実は変わりませんよね?」というセリフがあるのですが、これだけで作者のことは信頼できるなと思いました。

 

踏んだり、蹴ったり、愛したり

4巻まで(既刊4巻)。最初はpixivコミックで読んでいて、やりたいことはわかるけど2者の掛け合いだけでやるのは限界来るだろう、避けるか暴力かではない表現を探すべきで、第三者が口出せばいいのにと思っていました。しかし2巻で主人公の親が登場し、主人公のアロマンティックな経験や、迂闊に男と距離を詰めまいとする配慮が描写されほどよい緊張感が走るようになり、ずっと繊細になりました。後述の「飯フレ」と並び都市部の若年層のニーズを突く作品として最前線を走っていると思うので、完結したら感想を書きたいです。

 

バディ婚 お前とヤりたい10のコト

1巻まで(全2巻)。職場の同僚の男からアプローチをかけられるが主人公は今のままがよくて、というお馴染みの構図です。序盤までけっこう女性側も本気で牽制してましたが、男性側が怖いほど意志が強くてファンタジー感ありました。結局どう話がついたのか忘れたので読み直してから下巻いきます。

 

200m先の熱

1巻まで(既刊9巻)。マンション管理組合で一緒になった劇伴音楽家と出会う話です。巻の途中まではなんだか起伏がなくていまいちだったのですが、最終話が衝撃的に良かったです。内面と外面のすべてが「この人だ」となり、全身で発情に向かう感じが表現されています。しかしこんなところを描かれると今後のハードルが上がりすぎてしまうのではという気も。

 

 

中合わせで恋をする

2話まで(既刊12話)。分割で売られてる作品はしばしば扇情的なシーンを早々に入れてきますが、この作品は導入で恋愛文脈が出てくるのがかなり遅く貴重な気がしました。最初の30ページくらいはほぼ仕事の話であり、そこで顔合わせざるを得ない相手は当然たんなる仕事の相手なのですが、ふと雑談の間に人間が見えるみたいな場面から徐々に近づいていくんですよね。価値観をにじませる会話を大事にする物語に外れはないと私は信じています。

 

 

烏に単は似合わない

1巻まで(全4巻)。人に勧められたので読んだら面白かったです。若干ファンタジー要素ありますが設定のベースは『あさきゆめみし』的な平安の都です。要するに4人のうち誰が皇太子の妃になるかという話なんですが、主人公以外は恋愛というより権力闘争において様々企みがあるようで先が気になります。問答だけでさっそく一人蹴落とそうとする某君の描写が印象的でした。私は凶器を用いないバトルシーンが好きです。

 

 

ローカル女子の遠吠え

5巻まで(既刊10巻)。KindleUnlimitedに追加されるたびダラダラと読み進めている4コマ漫画です。静岡県に詳しくなれます。ときどき差し挟まれる「東京/それ以外」の構図を作る諸々の事態への批判には、東京には住んでいない者として共感できるところもあります。とはいえ基本的には楽しく読んでいます。

 

 

弱気MAX令嬢なのに、辣腕婚約者様の賭けに乗ってしまった

1巻まで(既刊3巻)。悪役令嬢転生モノです。主人公は乙女ゲーの記憶があって展開が読めるので、赤裸々にその内容を聞かせたところ、婚約者がその未来を変えようとガチで動き出して保護に回るという話です。「ゲームの展開通り婚約者から捨てられるのではないか」という恐れが、未来への不安となって主人公を襲ったのがよくわかります。簡易ではありましたが、転生前に浮気され捨てられたエピソードがあるのも効いているような気がします。気弱というか婚約破棄され棄てられる未来を見ていたらふつう誰でも不安で仕方なくなると思うので、主人公はなんとか生き延びてほしいですね。

 


ぬきたし  ―抜きゲーみたいな島に住んでるわたしはどうすりゃいいですか?

1巻まで(既刊5巻)。人間が大好きさん(@hito_horobe)の投稿を見て購入しました。色々おかしい設定ですが男性向けの18禁ゲームのパロディをやろうとしていることはわかりました。

主人公(表紙の女の子)の立ち位置が面白いです。彼女がフリーセックスに及び腰なのは、べつに反権威を目指しているわけでもなく、愛のあるセックスを信奉しているからでもありません。それでも行動としては反権威側に協力している。実は一番難しい位置にいる人かもしれません。

 

コミックDAYS

ヨコハマ買い出し紀行

5巻相当まで。なんか大量に無料公開してたので読みました。観測している範囲でファンが多い作品ですが、『ARIA』みたいな感じがします。しかし無言のコマがあったり小学生男子の行動のわずかな変化に注意が向いていたり、謎に細かい手法はこのあたりの漫画では珍しくなかったのだろうなと想像します。

 

ジャンプ+

エクソシストを堕とせない

shonenjumpplus.com

4巻相当まで。見た目のジャンルとしては『クロノクルセイド』みたいなキリスト教意匠のバトルって感じですが、価値観が現代版だった。フェミニズムの視点があります。

8話で、肉弾戦で勝って終わりにしないという作品のスタンスを理解しました。バトルもののプロット的には予想外すぎて驚くこともありますが、絵の説得力で納得させられます。話を作っている人は本当に西ヨーロッパ文化を愛してるんだなと思って熱いですね。ダンテとヴェルギリウスとか。話題の呪術廻戦よりも私は絶対こっちのほうが面白いしセンスいいと思うんですがどうでしょうか。

 

palcy

零れるよるに

10話(2巻途中)まで。児童養護施設の高校生2人の物語です。児童養護施設はどこの地域にもあるはずなのにあまり漫画では出てこない組織の代表格ですが、それを少女漫画レーベルで話の中心に据えたというだけで啓蒙の意味も込めて応援できます。大人たちがどう動いているかもきちんと描写されていますし、心理学的知見もたぶんちゃんとしています。ただ話を追うごとに話が暗く重苦しい展開になってきて、どういう気分で読めばよいのかわからなくなっています。

 

オタ友が彼氏になったら、最高、かもしれない

27話=5巻途中まで。オタク活動が主、付き合いは従で「いい友達」の関係がかなり長く続きます。活動の描写は詳しいので半分以上はその勉強のために読んでいる節があります。中盤になってくると、趣味に理解の無い人("一般人"*1)と破局した過去エピソードが描かれますが、現代でもこんなものなんでしょうか。

 

よなよな。-今夜も呑んで忘れましょう-

10話=2巻途中まで(全2巻)。どういう話か説明するのが難しいですが、ミレニアム世代からZ世代あたりの人が社会生活で感じがちな人間関係のモヤモヤをキャラクターが議論する(その中で自炊をしつまみを食べる)という形でしょうか。物語というよりは全然知らん人のブログを読むような気持ちで読んでいました。

 

Webアクション

君の名前をよんでみたい

comic-action.com

1話のみ。まだそれほど認知されていない障害が話の核心にある物語ですが詳しくは本編を。そういう要素抜きでも、「相手に弱いところを見せたくない」という感情でつながる話はとてもいいなと思いました。今年は他にそういう作品があったでしょうか。

 

ビッコミ

植物病理学は明日の君を願う 

bigcomics.jp

4話まで。事件が起こる→解決するという推理物のような流れで進むようです。登場人物の情緒がやたら激しく上下し、カロリーが高い画面に感じます。植物にまつわる漫画を探していて見つけたのですが、なんかちょっと好みとは外れます。ただ、人間は植物にとって略奪者なのか? という問題意識も末尾で少し見えました。

 

スペリオール読切

俺の尿路結石と高橋さん

bigcomics.jp

尿路結石だけでここまで話を作れるのがすごい。一見すると理由のない衝動に見えながらよく話を聞いてみると筋が通っている気がするのが何やら新興宗教に似た感触です。物質しか信じないって逆に狂気なんでしょうか。

 

わたしひとりの部屋

bigcomics.jp

特に、登場人物について論評できるほどたいした人生を私が送っているわけではないのですが、生活の苦しみを絵にするとこうなるのかと印象深く思ったページが多かったです。たくさんブックマークがついていますけど、なんなんですか? やめてあげてください。

 

トーチWeb

すごくいいけど語るの難しいので題名だけで勘弁してください。

to-ti.in

to-ti.in

 

カドコミ

植物モンスター娘日記 ~聖女だった私が裏切られた果てにアルラウネに転生してしまったので、これからは光合成をしながら静かに植物ライフを過ごします~

comic-walker.com

4話まで。タイトルの通りアルラウネ(動物を捕食する植物型モンスター)になってしまった聖女の話です。序盤からクマ型モンスターと戦って捕食したりしてるのでべつに静かに暮らしてはいない。この作品は植物にまつわる漫画を探す中で見つけたのですが、実際にヒトが植物になってしまいその体験を内側から報告する話は初めてだったのでとても面白く読みました。移動のできないもどかしさ、動物を丸呑みする躊躇、ハチと言語なしに協力関係を築くこと等、植物が生きていくために作り上げてきた戦略を追体験しているような気分になります。

 

pixivコミック

ただの飯フレです

https://comic.pixiv.net/works/9024

前年から続けて読んでますが、もう何話を読んだか忘れたので電子版を買いました。なんだかすごく人気が出ているようで、やっぱり需要あったのだなと思いました。ゴールとかあるのかわかりませんが一区切りついたら他の作品ともあわせて論を立てたいです。

 

Shuro

40歳 典子のリスタート!

shuro.world

2話まで。BL/TL漫画を多く描いていた此処田ヨー子先生の新連載です。もともと絵が好きでしたが、少し硬めのタッチになってさらにいいなと思ってます。40代の主人公ということですが、その要素がどう生きているのかはまだ測りかねています。ただ周囲のキャラクターがしっかり固められたので割と長く丁寧に話が作られるんだろうと期待しています。

 

Kindle(すべて読了)

うかおさ うっかり幼馴染と結婚の約束をしてしまってた結果

全1巻。三角関係ものです。自己批判する主人公の姿が印象的でした。自分の決断を引き受けるとはどういうことなのか、どこか淡々とした調子で示してくれます。

 

そういうことなら、わたしが。

全1巻。18禁です。ヒロインが主語のデカさや相手の同意を得ずに秘密を話すことなどに注意しているのがめっちゃ現代だなと思いました。でも自分の主張はちゃんとしている。カップルは出来上がっているしあまり関係の危機は無いのですが、周辺含めた人間ドラマはあるのでダレることもなく読めました。

 

わるいこと、ぜんぶ。

全3巻。昨年から続いて最後まで読めました。主人公が意外と感覚派で、あっさり教師を忘れて鞍替えしたのがよかったです。最後、子供がちゃんとほかの教師に助けを求めていたのが意外と珍しいかもと思いました。フィクションの中学生はもっと大人に助けを求めていいはず。けっこう身体接触はきわどいのですが体液的なシーンはないです。

 

 

いいから、俺に溺れてしまえ【デラックス版】

とにかく長い! そして論点が多すぎます。男女双方に対するライバル出現、遠距離、相手家族との折り合い、仕事上のピンチ、生活拠点を失う、オタク趣味との両立など、およそTLで描かれる困難をすべてコンプリートしたのではという感じがあります。中身に触れるなら別稿を期したほうがよさそうです。

 

 

処女やめたのにイケなくて(女たちのリアル)

全1巻。表題作はしょーもなと思ったのですが、2,4,5作目は面白かったです。OLとして軽視されながらも、クソなものには中指突きつけて、恋愛でだけでなく自分の人生全部を誰にも譲らない女性の姿が描かれています。

 

 

エロゲーのビッチ令嬢に転生したけど、純愛ルート目指します!

全1巻。悪役令嬢転生要素を取り入れたTLですが、かなりハードな描写があり取扱注意です。近年、商業ではなかなか見なかったほど過酷な展開が続きます。『O嬢の物語』的な雰囲気をもっと暴力的にしたような感じです。その後何を手に入れたとしてもこの悲惨な経験とは釣り合わないのではと思ってしまうのですが。

良かったのは、転生した主人公がヒーローに「あなたは誰?」と聞かれるところです。というか人が他人を完璧に演じられるわけないので、転生モノでこの問いが出ないことのほうがおかしいのでは。

 

 

拗らせ御曹司は恋がわからない

全1巻の短編集。絵がきれいだなとは思いましたが、話としてはそこまで特筆すべきものはなかったです(表題作は別にアロマンティックの男の話ではありません)。TL界では割と独特な絵柄とシークエンスだなと思いました。モノローグも画面から分けていて、女性への焦点化が強くないというか。この作家さんが描いた一般向けを読みたい気がしました。

 

 

欲情コンプレックス【コミックス版】

全1巻。上司のほうが良い職場環境を作ろうと必死なのはわかるので、ちょっと突拍子もない展開もまあアリかと思えてくる作品です。すれ違いがあっても大抵すぐフォローが入り対話している感があるので安心できます。終盤の主人公の誤解はお約束すぎて興ざめしましたが、最後まで性的接触に抑制的な部長は律儀でよかったしTLでこういう人が描かれることは希望だと思いました。

 

 

付記

多すぎて途中で分割しようと思いましたが、そうなるときっと来年までやらないので何とかまとめました。ただWebオンリーの作品は本当に何も記録しないで終わることもあり、読んだけど振り返るすべがない作品もたくさんあったでしょう。私はSNSでバズった漫画については意識して感想を考えないようにしているので(例えば今年の『アンチマン』のような作品など)、それがWeb上の漫画を読む経験全体を不自由にしている気がします。別にバズった作品の感想考えてもいいんですが、書くと「いま投稿すれば流れに乗れる」みたいな感覚に誘導されるのが嫌です。やはり漫画はオフラインで(あるいは機器にダウンロードして)読むものです。

同じジャンルを通年で見ているうちに、各ジャンルの中で自分が何を求めているかがわかってきたような気がしています。悪役令嬢転生では、ゲームのシナリオという運命とどう対峙するのかとか、転生の事実を周囲がどのように解釈し受け止めるのかといった点が私は気にかかります。転生というギミックの可能性はまだ全然汲み尽くされてはおらず、ちゃんと展開に活かしてやろうという感じがする物語が私は好きです。大人の恋愛ものでは、「緊張感」というキーワードが頻出しました。ジャンルと矛盾するようですが、恋愛はもはや基本的に避けるべきものです。社会的地位の上下が付きまとう職場で何も考えずに恋愛をするのはほぼ確実にハラスメントですから、上司も迂闊なことはしないでしょう。異性との恋愛ではない情緒的なつながりを求める人は、あまり距離を詰めすぎないように注意したり相手をけん制したりする必要に迫られるでしょう。そういった緊張のひとつひとつを描いていく作品が珍しくなくなったと思います。その緊張を見守ること自体が、私にとって、おそらく世の一部の人にとっても、ひとつの娯楽になってきたのです。

今回は備忘録なので大上段な語りは程々にいたしましょう。前年に言っていた少女マンガ作品の記事は書けず、ロックマンエグゼの漫画を読んだりボカロラップの歌詞を読んだりと謎の一年でしたが、まあそのとき興味があるものを取り上げていきたいと思います。あと自主流通の冊子や文学フリマで買った本も未読がおそらく100冊くらいになってしまっているのでそちらも早く読みます。

 

皆様、今年もお疲れ様でした。年明けには文学フリマ京都の告知を行いますので、そちらもよろしくお願いします。

*1:オタクの選民意識が見えて嫌な言葉ですね。