漫画を読む

フェアプレーより蝶を選ぶ――『ロックマンエグゼ』(漫画版)のセレナードはなぜ魅力的なのか

今回は、小学館の漫画・ホビー情報雑誌『コロコロコミック』上で20年ほど前に連載された、とある漫画のキャラクターについての話をします。ファンの叫び的な性質が強い文章であるため、こちらのブログに掲載することにします。 鷹岬諒『ロックマンエグゼ』は…

他人たちのような自分―琴葉とこ『メンヘラちゃん』(上)について

メンヘラちゃん (上) 作者: 琴葉とこ 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2012/10/17 メディア: コミック 購入: 3人 クリック: 578回 この商品を含むブログ (13件) を見る この作品は、ある人から教えてもらった。正確には教えられたというより、そ…

依存の闇と「うれしさ」の自立性―『ラストノーツ』について・3

先の記事では、この物語のテーマが「自立」にあるということを最後に予告していました。 dismal-dusk.hatenablog.com 私がそう言ったのは、3巻では、「なぜ自立できないのか?」(自立していないとはどういうことか)という問いについて3つの答えが用意され…

「ここ」で生きていく男、「ここ」を去る女―『ラストノーツ』2巻について

前回に引き続き、標題の作品について気ままに書いていきます。今回は、主に2巻の内容について書いていくことになります。 ラストノーツ(2) (フラワーコミックス) 作者: 桜小路かのこ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/07/07 メディア: Kindle版 この…

祝福された居候状態―桜小路かのこ『ラストノーツ』について

少し間が空きました。前から書こうと思っていた作品についての感想文です。また連載のような形になるかもしれません。 ラストノーツ(1) (フラワーコミックス) 作者: 桜小路かのこ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/04/21 メディア: Kindle版 この商…

『タビと道づれ』総論―ヤンキー的リアリズムとタビの旅(仮)

とりあえず、無理にでも今回は話をまとめていこうと思います。どんな切り口にすればよいのかかなり迷ったのですが、最終的には、斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』(以下『土曜の夜』)の「ヤンキー的美学」の記述を手掛かりに進めていこうと思いました。 『…

自分の椅子と罪の日傘―『タビと道づれ』ツキコ(と航一)について

今回はツキコについてです。前回のニシムラの片想いをめぐる物語はなかなかシリアスなものではありました。しかし彼女のエピソードは、そのドラマに対して水を差すような読解を提供しているようです。 ニシムラの考えていたことは、第一に「航一と月子は円満…

永遠の片想い―『タビと道づれ』ニシムラについて

この続きです。 今回主に語るのは街の警官ニシムラについてです。この順番でいいのか分かりませんが、とりあえず進めていきましょう。

「この街には何もない」ということ―『タビと道づれ』から

いつもの通り自分語りから始めますと、私は都市らしい都市までは確実に一時間半ほどは要する中途半端な郊外の出身であり、今もそこに住んでおります。この街はなにか全国区の名物を有しており、休日のたび観光客がせっせと足を運ぶ……などということはほとん…

作品の公開と不可能な廃棄―芦原妃名子「月と湖」から

私は、一年ほど前に次のような記事を公開しました。 今でも基本線はここにあるつもりですが、さすがに雑駁に過ぎるとの印象が拭えません。いくつかの点をまったく省略した、素描にすぎないものであることは明らかです。少しずつ補足していく必要があるとは前…

作品を養うものと批評―『もう卵は殺さない』の比喩から

ご無沙汰しています。現在まだ就職活動中ですが、そこからの逃避に何か書こうと思い立ったところです。 さて、ところで私は、ここで何らかの作品をとりあげてべらべらと喋ったことはあまりありませんでした。前々回の記事くらいでしょうか。しかし実はと言う…

『メイド諸君!』を読んで―ご主人様の憂鬱とメイドの献身

先日『メイド諸君!』を読んでから、得体の知れない気持ちの悪さが亡霊のように回帰し胸の辺りに渦巻いています。思いの外、私はこの作品に打ちのめされた(?)ようでした。そのように、ああ面白かった、で済ませることのできない読書というのがたまにあり、…

COMITIA131で購入した本の感想

今回は自分で頒布するほうがメインだったのであまり買えませんでした。 敬称略で失礼します。 例)『本のタイトル』(発行者) 『春と東風』(果野) 【あらすじ】東風(こち)は高校生、軽音楽部の友人二人とバンドを組んでいる。彼女はラブソングに歌われ…