2021年に読んでいたマンガ作品備忘録

2020年に書いたこちらの記事を踏襲しています。

dismal-dusk.hatenablog.com

最近は、紙の連載→紙の単行本+その電子版 というより、Webサイトで一話ずつ連載し課金を求める形式がだいぶ増えましたね。またWebサイトと同時に、出版社やプラットフォーム企業毎に専用のアプリがいくつもあったりして、一元管理がまったくできなくなっています。自分がいま、どのアプリやWebサイトを使って何を読んでいるのか記憶しておくことすら、新たな管理労働のような気がしています。まあ紙の漫画本について、本を売っているところと本棚あるいは段ボールとを行き来させるのも労働といえば労働だと思いますが、どちらがマシなのか私にはわかりません。

愚痴はともかく、そういう事情もあるため、今回は読んだ媒体別に分けて書いてみようと思います。そうすると自分がのちに振り返るときに便利です。また、物語の最後まで読み終えていないものも挙げます。途中までは無料だから読んだという作品が異常に多かったからです。

読んだマンガを振り返ったのは2020年が最後なので丸2年分空白がありますが、まず2021年をまとめます。長くなってしまったので2022年は別記事にします。

今回はなんとなく読んだのが昔である順(昇順)に挙げていきます。

全6巻。大体の感想は次に。

hesperas-drafts.blogspot.com

全3巻。なんかほとんどのキャラクターが不快だったんですが、人間って近づけば誰しもこんな感じだよなとも思いました。漫画家の真希という人が出てきますが、根本的には自信がない一方で親密な人間には高慢な感じが他人事ではないですね。

 

Kindle(最後まで読了)

全3巻。はるか昔のような気がしますが、2021年1月読了のようです。たしか田舎町が舞台でコテコテの昭和的価値観をもつ人々に主人公がブチ切れるみたいな話だった気がするんですが、結末は忘れました。印象的だったセリフだけメモしてあったので貼ります。

「世の中にはいつまでも障害物をどけることができずに それを邪魔だ邪魔だと文句を言って
 立ち止まってしまう人たちがいるんだ
僕はそれが全く理解出来なくて そういう人を正さなければと それは違うって 何度も何度も伝えて 挙句 大事な友人を壊しちゃったんだ」

まあブチ切れるのはもちろん必要とは思いますが、過渡期のなかなか変わらなさの中で、人が壊れることを回避しつつどうやって速度を上げていけばいいのかという問題意識も見える話のようです。いつかちゃんとこの点を掘り下げて語りたいですね。

 

全4巻。原作は「エブリスタ」で公開された小説です。

死について美的価値を云々するかのような表紙の女の子はかなりNot for meだなと思ったりしたのですが、理解できる範囲で理屈っぽい場面も結構多くて面白かったです。2巻の、ともに親で苦しむ主人公とカエデの不思議な連帯感が好きでした。しかし、親が死んだとしても、虐待されていた子は真に解放されることはない点に問題の根深さが見えます。その辺に造詣が深い方の意見が気になりますね。

 

全1巻。「男が怖い」という設定はわりと少女漫画やTLでも出てきたりしますが、その描き方がお手本のような感じだったのでここに挙げておきます。後半はオーソドックスな展開で面白味は少ないです。主人公が女性向け漫画家という設定で、「自分の感じた葛藤や醜い感情をこそ作品に活かせ」と担当編集から言われるシーンがありました。いいシーンなんですが、いろいろ思うこともあります。根性論が許せる人向け。

 

全2巻。マゾヒズムについてのお話のように見えますが、性別違和を持つ方が恋愛に入った場合のひとつの経験談として私は読みました。終わり方が悲しかった。記憶が薄れているのでもう一度読みたいです。

 

全2巻。「蛙化現象」(好きだった男性が振り向いてくれた途端、相手のことを「気持ち悪い」と感じてしまう現象)が描かれるということで読んだんですが、別に蛙化現象については何もわかりませんでした。どちらかというと、自信が持てず自己卑下に走りがちな、割とオールドファッションな主人公を知人たちがどう励まし支えていくかという点に主眼があります。

2巻に付いていたファンタジー短編はいまいちうまく頭に入りませんでした。比較するのもあれかもですが、白泉社の『花とゆめ』に出てるようなファンタジーってどれもすごく洗練されてますよね。

 

全3巻。タイトルから想像つきますね? 主人公いっぺん刺されとけ案件です。全話を通して、童貞コンプにまみれた二人の男の足の引っ張り合いが一番の見所なのではないかという気がしました。女性キャラのモノローグはいっさい切ってあるので昔のエロゲ感があります(主人公に都合がよいということではなく、内側から心理は明かされないということです)。

 

全7巻。ガワはそんな感じしなかったんですが、とてもシリアスな作品でした。たしか姉弟が肉体関係をもってすごく盛り上がることになるんですが、その関係の高揚は近親姦のタブーを破る背徳感なのではないかという懐疑や、ある人物の屈折した感情表現がとても印象に残りました。たぶんこれで記事3~4本は書けるのでいつかちゃんと読み直したいです。

 

全1巻。こういう話で久しぶりに悪役もかわいそうだと思いました。修羅場や関係がバレていく見せ方は非常に上手いので、全2巻とかでもう少し展開を遅くしていたら名作だったかもしれません。

 

全1巻。絵柄、表情の書き方が割と好きです。タイトルで提示されているとおり、親友がアプローチかけてきたらどうなるのかという問題が描かれます。この問題に真摯に答えようとしていると私は思いましたが、女性にとって「恋愛にならない親友」の価値は望外に高いということが男に理解されずに終わったのではとも思います。

 

全1巻。青柳さんのツイートで知ったので読みました。たしかに序盤のディテールは良かったと思いますが、男の方の内面があまりわからないので盛り上がりがすごくあったわけではなかったです。ただ2人がどうして互いに意識するようになったかはすごく納得できる描写でした。

 

全1巻。天堂きりん先生は他のどの作家とも目の付け所が違う独自の地位を築きつつあります(私の中で)。最後の話はエホバの証人かな。オタク男子が出てくる話もありますが、マジで1ミリも恋愛にならないし、だからといってアロマンティックとかそういう語が出るわけでもなく、なんか納得させる力があります。間違ってもTLでないしBLとかジェンダー論に近づくわけでもない。立ち位置不明の本です。

 

全1巻。表題作が地味だけど良かったです。男側の気持ちは描かれないので共感できたとかそういうことではないのですが、やりたい欲に色々と言い訳つけないで本当にやる話ってそうそう無いのではと思いました。だいたいエロ漫画や官能小説を書かねばならないからとか、トラウマとか何かの克服とか、世間様の目が厳しいからとかあるじゃないですか。この作品はなんもないので素直に読んでください。

 

『次に会ったら…』と同じ作家さんです。なんというか、TLでよくある男の暴走について一旦の停止を挟んでいるので、繊細だなと思います(相手の権利への感覚というか、その辺りが従来と違うところです)。

 

DMMブックス

全7巻。A子とA太郎2人の大学時代が回想されうだうだする2~3巻(?) のあたりの表現がすごいなって思いました。自他境界を危うくしていくカップルの話というか、精神分析的な絡みがすごくある作品だと思うんですが、ざっと探したかぎりではそういう感想を見つけることはできませんでした。マンガ表現と精神分析に詳しい人がいたら誰か書いてください。

 

全34巻。アニメに先立って結末を読みました。感想を書くことは確定してるのですが、正直王宮編の最後とマーレ編の奇襲のときのアニメが一番好きで、あんまり終盤のほうに思い入れはないです。

 

全11巻。何もメモを取っていなかったため内容が思い出せません。いや、終盤で主人公と付き合うことになった相手? となんとなく互いに踏み出せないままグダグダやってるのは覚えてるんですが、ちょっと身に覚えがありすぎてうまく距離が取れなかったのかもしれないです。でもなんか相手がそういうことウェルカムじゃなさそうなのに自分から行くのってどうなんだろうと思いません?

 

全7巻。1巻に「恋愛に夢中になるのもバカにできないよ それで死んだり狂ったりするんだから」というセリフがあって印象に残っていたので読みました。ただ『凪のお暇』的になんかいろいろ詰め込んだ感じで、そんなに整理されておらず、好きじゃないかもしれないと思いました。渡辺ペコ先生はまず短編行ったほうが面白いかもしれません。

もしかしてこういう年代の都市生活者を描くリアル志向の漫画って、まさに生き方の確固としたロールモデルがないから極度に模索的な展開の漫画になってしまうんでしょうか。だとしたらちょっとしんどいな。

 

Kindle(途中まで)

2巻まで。絵柄はちょっと前時代的ですし、設定も人権なにそれおいしいの的な感じなので万人におすすめはできないですが、意外と隠微な罵り合いも展開されたりするので、単にエロとキャラ類型で殴りつけるだけみたいな話ではないです。

 

3巻まで。アニメのOPだけ見たことあったんですが、面白い、気がします。あまりこういう和製ファンタジーマンガみたいなものは読まないのですが、設定が独特だと感じました。「神は善悪を知らず、使いの苦痛によって悪を知る」とか、「不特定多数の主に使われるのは複数の名を持つ「野良」と呼ばれて忌み嫌われる」とか。普通の伝奇バトルものではない予感がします。

 

1話のみ。最近のTLは女性の積極的度合いがヤバいと聞きますが、これなんかも割とそうなのではと思いました。フェチズムというか、自分の自由にならない性的好み(≠性的指向)みたいなものはその人の人格の深い部分にかかわっているので、小馬鹿にされたりせず大事にされなければならないんだ、という思想が予感されています。でも本当にそういう話になっていくのかは1話時点ではわからないです。まあ、別に自分は性的好みを馬鹿にしていいとも馬鹿にするなともあまり思わないんで先を読めてないんですが……

 

2巻まで。地味に好きなシリーズなんですが、あんまり魅力を考えずに読んでいたのでうまく語れません。主役2人がどちらもしっかり働いてる感じするのがいいとかそういうことなんですかね? 私に代わってオタク語りをしてくれる方を待っています。最近3巻が出たらしいです。

 

1巻まで。ベタベタとためらいなく人の身体に触る作品が多い中、これは触られる側の怖さを割と頻繁に描いていたのが印象的でした。3巻で完結したようなので最後まで読みたいです。

 

1巻まで。ここが面白いですよー、見せ場行きますよーみたいな演出が極限まで抑制されていて、人の等身が変わったり表情がめちゃくちゃになったりしないのでマンガというより映画っぽい感じがしました。押しつけがましさがない画面というか。話もよかった気がするので続刊を買いたいです。今ここで何も言えてないみたいに、語るの難しい作品ですけどね……

 

2巻まで。改めて見るとすごい即物的なタイトルだな。大人の恋愛は結婚の査定の意味があるために、料理の味付け一つとっても気を使うということなど、ディテールが割としっかりしている印象を受けました。ただ2巻になると新鮮味はなくなってきたので止まっています。

男のライバルに特にイヤなところがないというのはいいですね。少女漫画ではそういうことは珍しくないですが(僕等がいたとか、ストロボエッジとか)、TLだと紙幅の問題か、ライバルが単に嫌な奴に描かれる傾向にあるので。

 

1巻まで(既刊2巻)。「Aセク腐女子×一途なゲイ」という宣伝文句がついていたので、これ大丈夫なやつか……? 適当に人のセクシュアリティで遊んで終わりにならんか……? とおそるおそる読み始めたのですが、とくに前者のアセクシュアル(かつアロマンティック?)の経験をなるべくかみ砕いて紹介してくれたような気がしました。大学時代の主人公が英語圏に短期留学して、なんで彼氏作らないん? みたいな質問をされまくるという展開があるのですが、欧米であればその辺進んでいるから完全に生きやすいということはなく、カップル文化も同時に根強くあるので大抵の場所は日本よりもむしろキツそうだなと思いました。なんで2巻読んでないんだろう。読みます。

 

1巻まで。内省的で不器用な主人公、幼馴染の心理を描くのが巧みでした。こういう陰のある百合がもっと増えてもいいと思います。

 

1巻まで。面白かったです。花ゆめにありそうなコメディっぽい雰囲気で、少女漫画感が意図的に破壊されており楽しい。主人公がなかなかに人間不信の社会不適合者なので、どうかその辺を崩さずに話を進めてほしいと思います。既刊14巻で未完ってめっちゃ長いですね。

 

1巻まで。普通に面白かったです。昔の時代、恋愛感情一切なしの人が結婚したら本当にこんな感じだったのではと思わせてくれます。

 

1巻まで。舞台が車移動必須の地方で、主人公が親と同居というのがまず貴重です。都会の一人暮らし達の話はもうおなかいっぱいなので。理事長はTLというよりレディコミにいそうな陰のある男性ってタイプですが、父子家庭の父ってそういえば描かれることが少ないなと思いました。実在している人々をちゃんと登場させるこういう話がもっと増えればいいと思っています。

 

6話まで。主人公がいちばんキャラがつかめない気がします(が、それは彼女の劣等感が自分の劣等感とは違うというだけなのかも)。部長と心愛の含みのある応酬なんかは、ありそうなぎりぎりのラインで好きなのですが。絵も展開も丁寧なので先を読もうという気にはなっています。

 

1巻まで。基本は日常場面をコミカルに4コマ的なノリで描いていくのですが、中盤超えて急にコマの割り方が変わって散文的になります。「わいせつ教員」が取り沙汰されるようになって以降の「教師と生徒」ものとしては、とても慎重に妥協点を探っているような印象があります。5巻までにどのような結論を出すのか確認したいと思います。

 

2巻まで。この巻の最終話の引きが上手すぎてうわーッてなった記憶があります(ではなぜ続刊を買わない?)。人物相関図はだいたい1巻ですべて揃っていたと思うんですが、7巻までにどうなるのでしょうか。心に余裕があるときに追っていきたいですね。「恋愛感情が薄い人の描き方は割といいかもしれない」とメモが残っていました。そうなのか(そんなキャラいましたっけ?)

 

コミックDAYS

最終話まで。「私のためだけに生きてはダメ」という母の言葉が良かったですが、話の内容はよく覚えていません。結構えげつないいじめ(身体的暴力)があった気が。

 

LINEマンガ

『フローラの白い結婚』

manga.line.me

15話くらいまで。流行りの異世界転生じゃなくてガチの中世の地中海諸都市が出てくる作品です。キリスト教文化や中世ヨーロッパについて興味があるとより楽しいんじゃないでしょうか。話としては仮面夫婦ものに近いと思うのですが、日常描写だけで面白いので展開はあんまり覚えていません。エロはほぼなかったと思います。

 

マンガMee

3巻相当まで読んだと思います。事情は忘れましたが、大学生くらいの年の子とアラサー社会人が同居する話ですね。「顔が良い」という表現がくどくて段々辟易してきましたが、自分の知らん文化圏のことを知れるので新鮮ではあります。あと、少なくとも2巻までは恋愛感情が特に強調されないのが今風です。今後はわかりませんけども。

 

Palcy

3巻半ば(10話)まで。あの厘のミキ先生がバチバチヘテロラブを描くとは誰が予想できたでしょうか。ハードな流血描写が多く人を選ぶとは思いますが、なんかもう主人公まわりフィジカルもメンタルもいろいろ救いようがないので、そういうどん底なものを読みたい気分のときには向いています。

 

3話まで。一見よく見るような自信ない系主人公ですが、描き方に妙に諦観が漂っているので注目していました。男が信用できる奴なのかが気になりますが、なんとなく追うのが止まっています。再開しようと思います。

 

その他無料公開など

4巻相当まで。改めて言う必要もないんですが、表情に力があるので紙だとすごいでしょうね。芝居をやる人たちの話ですが、アマチュアで芝居に自分の実存を賭けていく友仁だけではなく、冷田さん、愛姫等の、お芝居の商業主義と自分のしたいことの間でバランスを考えている人たちの言葉があるのもいいと思いました。あれ、主人公の印象がゼロだな……

 

アレの隠された場所にたどり着くところまで?  描かれる時代が時代なので軍隊の話が多いんですが、今が軍隊に入らされる時代じゃなくてよかったとマジで思いました。わりと作者の方も自覚的に売りの一つにされている「食べ物」の重要性については、いろいろ語れるんじゃないかと思います。いつか感想をちゃんと書きたいです。

 

webアクション

comic-action.com

1話完結。恋愛に対する幻想がいかにして壊されていくかを克明に描きます。一人の人間の自尊心を損なっておいて男子共に何の制裁もないのがマジでムカつきますが、それはそれとして、自分もはっきり覚えてないくらい昔の、もちろん男女の別など付く以前のじゃれ合いから別の幻想を喚び起こすのは取り得る一つの手段かと思います。

 

付記

内容を覚えておらずコメントできない作品は外しました。また、そんなに面白くなかった、続きは読みたくない、何らかの強い反感をもった作品は、これらとは区別してどこかでまとめたいです。自分が何を受け入れられなかったのかを考えることはある程度重要だと思っています。私が許容できないもの、自分自身から遠くに置きたいものは、論理上自分の中にあったはずのものだからです。

こうして一覧にすると、2021年も相変わらず恋愛ものばかり読んでいて、特にTLレーベルが多くてびっくりしました(ソルマーレとぶんか社が強い)。中でも、友人や単なる協力関係から恋愛関係への変化の困難だとか、アセクシャルの描かれ方とかに関心があったようです。たしかに、年の前半は身辺上のことで色々考えていたので納得できる傾向ではあります。

次は2022年をまとめていきます。