「この街には何もない」ということ―『タビと道づれ』から

いつもの通り自分語りから始めますと、私は都市らしい都市までは確実に一時間半ほどは要する中途半端な郊外の出身であり、今もそこに住んでおります。この街はなにか全国区の名物を有しており、休日のたび観光客がせっせと足を運ぶ……などということはほとん…

おすすめ漫画集(未完結編)

前回と同じ方針で。 基本的に未完結の漫画を追うことは少ないので、数がありません。

作品の公開と不可能な廃棄―芦原妃名子「月と湖」から

私は、一年ほど前に次のような記事を公開しました。 今でも基本線はここにあるつもりですが、さすがに雑駁に過ぎるとの印象が拭えません。いくつかの点をまったく省略した、素描にすぎないものであることは明らかです。少しずつ補足していく必要があるとは前…

暫定版・ジャンル別おすすめ漫画集(18/7/16更新)

こちらではご無沙汰しています。知人との共有なども目的に作成したので公開します。 独断と偏見でジャンル分けを決めた上で、数を絞るため以下の規則に沿って作成しました。 あまりに有名で古典に類すると思われるものは省略 同じ作家は1シリーズのみ 未完の…

『自殺の歴史社会学:「意志」のゆくえ』について

私は社会学の考え方をきちんと正当な手続きをもって学んだことはなく、社会学の古典をじっくり読んだこともほとんどない。社会学全般に関して門外漢といっても差し支えない人間だと思う。しかるに今回取り上げるのは社会学のちゃんとした本である。

『かたわ少女』琳ルートについて―名もなき絵画と飢える身体

さて、琳ルートです。実は笑美ルートを次に書こうと思ったのですが、ひとつ私にとってあまりにもタイムリーな要素が含まれていたルートなので、静かに向き合えるまで後回しにすることにしました。とっくに残りの全てのルートも終えているのですが、なんだか…

『かたわ少女』静音ルートについて―公正さ、声、切断、日常の唐突

なんだかんだいろいろ考えることのあったルートだと思います。登場人物数が多かった割に一言も触れてない人たちがいますね……まあいいか。

フリーゲーム『かたわ少女』をやりました

前回の記事を振り返ると、いろいろ論理的に不備が見受けられますが、それはまた後の機会に批評自体への考察も含めて振り返りたいものです。 さて、今回は海外製ノベルゲーム「かたわ少女」をやって考えたことをつらつらと書いていきます。 https://www.kataw…

作品を養うものと批評―『もう卵は殺さない』の比喩から

ご無沙汰しています。現在まだ就職活動中ですが、そこからの逃避に何か書こうと思い立ったところです。 さて、ところで私は、ここで何らかの作品をとりあげてべらべらと喋ったことはあまりありませんでした。前々回の記事くらいでしょうか。しかし実はと言う…

できるだけ建設的であろうとすること―メシア的構造と決断

思春期にありがちな実存主義的な気分を克服しないまま大学でポストモダンに触れると両者が融合して「客観的事実というものはないんだ!俺はどうしたらいいんだ!」という実存主義的ポストモダニストになる。 — ひのえ (@hinoe_t) 2013年7月20日 最近こういう…

『メイド諸君!』を読んで―ご主人様の憂鬱とメイドの献身

先日『メイド諸君!』を読んでから、得体の知れない気持ちの悪さが亡霊のように回帰し胸の辺りに渦巻いています。思いの外、私はこの作品に打ちのめされた(?)ようでした。そのように、ああ面白かった、で済ませることのできない読書というのがたまにあり、…

古代ギリシア美術の鑑賞チートシート

古代ギリシア展いつからだっけなあと思っていたらもう明日ですね。期間中に2回くらい行けたらいいなと思っています。 以下は、何が何だかわかりにくい陶器画などの鑑賞のお供にしてください。 動作・事物 手でベールをつまむうつむき加減になる 女性の慎み深…

親鸞の生涯と思想

ある講義のノート再利用。 親鸞の生涯 親鸞は、承安3(1173)年に京都日野の里に生まれた。9歳のとき青蓮院の慈円のもとに得度するが、これは当時源氏と組んでいた以仁王と親鸞の家系が関係していたため、平氏の追求を逃れるという目的があったと推測される…

高校時代の自虐論まとめ 補足

前回の記事について、いつも読んでくれている方から何点か指摘をもらったので補足します。 dismal-dusk.hatenablog.com ・自虐と自己批判とはどう違うのか。 自己批判は多くの場合、自分の間違いを修正しよりよい方向に変わろう、少なくとも間違いを避けよう…

高校時代の自虐論まとめ―自虐と他者

高校時代にツイートしていた理屈を分類しつつ供養しようと思う。一度まとめようと思って放置していたが再開した。 どうやら前提となる考え方が大きく分けて2つあり、そこから自虐という振る舞いがある種の自己救済の試み(?)として掲げられるようだった。…

「自傷的自己愛」の表出としての自虐

最初の記事で載せたものをほぼそのまま再掲する。 「自傷的自己愛」という概念がある。ひきこもりや自傷行為の経験者はしばしば「自分が嫌い」「死にたい」といった言葉を口にする。「自分がダメなことは自分自身が誰よりもよく知っている」、この「知ってい…

「自分に厳しく、他人に優しく」から始まる思考実験

「自分に厳しく、他人に優しく」。どこかしらで耳にするひとつの道徳的な教えかと思います。私たち若者の中にはスレた輩も多く、そんなことを大っぴらに口にするのはどこか憚られる雰囲気もありますけれども、周りによく話を聞いてみればそれを格率としてい…

イキイキとした活動と躊躇いと俯きがちな人

記事の内容や敬体の末尾表現にすらロクに統一性がないこのブログ、初めてブログっぽく日々思ったことを適当に書きます。 最初に思いついたのは、何に関してでも、躊躇いが無くなった瞬間というのが一番狂ってて物騒なのだろうということです。感情任せにそう…

名状しがたい人間関係を描く作品リスト(漫画・小説)

最終更新:2016/7/16 今回は、名状しがたい人間関係に触れている作品を挙げていきます。 そうしたものに何か共通性を見出して一括りにするのは困難なのですが、おおまかに次のような事柄を想起していただければと思います。 二者のごく緊密な関係による公的…

ジョン・ロック『人間知性論』要約・訳と内容①

今年度、次の文献を少しだけ扱ったので訳と内容を振り返りがてら書いていく。 Abstract of the Essay, pp. 365-398が要約となっている。 なお、参考の訳としてはフランス語からの重訳 ジョン・ロック『人間の知性に関するエッセイ・仏訳摘要』抜粋(福鎌忠恕…

重い人間関係を求める人へのブックガイド

大学に入りいろいろ漁ってきたものをここらでまとめます。 新書文庫ばかりなので誰でも読めます。

女生徒の感覚

最近はこの先何をテーマに研究しようか考えているが、その候補が一つあるので書き留めておく。 中学以来、今よりもっと実存的な気分になり、日々が苦痛だと感じていた時期に必ず抱いてきた感覚がある。それを実に精確に言い当てていたのが、太宰治の『女生徒…

仏教思想史(原始仏教~法然)

原始仏教から法然までの要点をまとめました。浄土教の講義だったので、それに関係ある点しか書いていません。

「アイデンティティ」の解釈について

ほぼ一年ぶりの更新となります。何書いていいかわからないので大学のペーパーをコピペしたものを貼り付けます(もちろん自分で書いたものです)。 興味を持ってくれただけで有難いことですが、疑問質問批判ありましたらよろしくお願い致します。

はじめました

ブログのタイトルは適当です。今までは本当に自虐日記のようなものしか書けませんでしたが、あまり自分語りに固執しないような方針をとりたいものです。 とりあえず、なぜ私が自虐できなくなってしまったかを貼っておきます。 https://app.simplenote.com/pu…

江永泉さんが言及していたやる夫スレ「ハリポタ世界と鉄血のオッサム」が面白かった話

タイトル通りです。 この記事は無駄に長いですが、要するに自分の読んだものが面白かったという旨を誰にともなく報告するものです。 このようにブログらしい動機の記事はこのブログでは珍しいほうかと思います。 江永泉さんとはどんな人かというのは、ご本人…

COMITIA131で購入した本の感想

今回は自分で頒布するほうがメインだったのであまり買えませんでした。 敬称略で失礼します。 例)『本のタイトル』(発行者) 『春と東風』(果野) 【あらすじ】東風(こち)は高校生、軽音楽部の友人二人とバンドを組んでいる。彼女はラブソングに歌われ…

このブログとその管理者について

このブログの目的は2つあります。1つは、管理者が着目したフィクション作品や書籍、Webサイト等について感想を記し、紹介すること。もう1つは、管理者が文章を書きアマチュアの本づくりを行った際に告知を行うことです。 第一の種類の記事については、上部ナ…