前回と同じ方針で。
基本的に未完結の漫画を追うことは少ないので、数がありません。
神寺千寿『弟の顔して笑うのはもう、やめる』
既刊3巻
この作品に言及するのは時期尚早だったかもしれません。しかし完璧な準備ができるまで何も語らないとするなら、いつまでも何も語ることはできないでしょう。
外形的なところから始めると、この作品はTL(ティーンズラブ)と呼ばれるジャンルを主に扱うレーベルに属しています。TLとは性描写を含む女性向けの漫画のうちでも異性愛を描いたもののようです。あまり多く人々の口に上るようなジャンルではないでしょうし(じつはBL同様市場規模は大きいのではないかと思っていますが)、男性はその存在すら気にかけないかもしれません。ですがこの作品は男女関係なく凄みを感じさせるものだと思います。まず読んでみてください、このようなインターネットの辺境にまでご足労頂いた方には、「幸福な少数者」としての密かな楽しみが降ってこなければ嘘でしょうから。
内容については、タイトルからも予想されますが、ごく基本的なところでは家族のあり方というのが一つの鍵となっていきます。画は全体的に繊細な線によって描かれますが、各人物に決して柔弱なところはなく、容易には折れない強靭さを見せつつ闘いを続けます。その激しさを語る言葉を私が現在持ち合わせていないことがただただ残念です。
以下では3話までが配信されています(2018.5時点)。無料というと何か怪しいのではないかと身構えるのは正しいと思うのですが、このサイトは合法だといわれています。https://www.sukima.me/book/title/BT0000290133/
既刊5巻
パッと見ライトな百合ものという感じなのですが、核にあるのは世界中の恋愛物語の中で何度も取り上げられてきた伝統的な主題です。主人公の性質もあってリリカルさは抑制されつつも、観念的になりすぎてもいないバランス感覚が好みです。
佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』
既刊9巻
工場で働きながら高校に通う若い男の物語……といってなぜ興味を持ったのかよく覚えていないのですが、それぞれ事情を抱えた人々の捻じ曲がり方が結構えぐいなと思ってみています。
最近はキャラクターが増えてきて整理しきれなくなっており、どういう風に物語をたたむのか期待されます。
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現在これらのほかには、柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』も追っていますが、こちらはすでに各所で話題になっていますし私がなにか言うまでもないでしょう。また何か見つけ次第追加していくことにしますが、新しい作品であれば過去のものより面白いというわけでもないため、相当惹かれてなければこれ以上連載中のを追うことはない気がしています。