重い人間関係を求める人へのブックガイド

 大学に入りいろいろ漁ってきたものをここらでまとめます。

新書文庫ばかりなので誰でも読めます。

 友人関係

「透明な関係」への痛烈な批判

友情を疑う―親しさという牢獄 (中公新書)

友情を疑う―親しさという牢獄 (中公新書)

 

 全体的に、友人間に親密さなど必須ではないだろ、むしろ余計だろ、という思想家たちのことを中心で話が進みます。

 特に読んでほしいのは、p.122以降のルソーの友情論です。なんでもさらけ出せる相手との「透明な関係」がどれほど異常で恐ろしいものかを描いてみせています。それっぽい部分だけ切り出してるのかもしれませんが。

「絶対受容」の幻想

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)

 

  やさしい文体です。親しい人間に対して絶対受容を求める人多々ですが、そもそも他人は自分にとってありがたい存在になったり脅威になったりで一辺倒じゃないでしょ、というごく当たり前のことなどが書かれています。

「優しい関係」のジレンマ

友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)

友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)

 

  内容的には少し前ですが今でも通用するのでしょうか。学校空間、ケータイ、ネット集団自殺などの分析を通じて、重いとは少し違うかもしれませんが、ねじれた人間関係の仕方が切り出されています。承認とか自己像の問題にも関わっています。

 同著者の本では、

「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)

「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)

 

なんかが関係あるところです。 

 

恋愛関係

情熱的恋愛の歪んだ側面

愛の思想史 (講談社学術文庫)

愛の思想史 (講談社学術文庫)

 

 第2章と第3章が特に有益でした。死へと驀進する破滅的な愛、自我中心主義の陶酔に溺れる愛が具体的な西洋の古典を挙げながら語られ、ちょくちょく冷静な書き手のツッコミが入ります。多少価値観が昔のところもありますが面白いです。

共依存嗜癖である

愛情という名の支配 (新潮OH!文庫)

愛情という名の支配 (新潮OH!文庫)

 

  あまり学術的考察は強くなく、実際にどんなケースが見られるか、どう対処するのがいいかという指南本です。夫婦間のほか親子関係にも焦点が当てられます。

恋していない人のほうがよい?

パイドロス (岩波文庫)

パイドロス (岩波文庫)

 

  序盤のp.20(231A)あたりのリュシアスの書物の人間学っぽい洞察は今でも通用するほど鋭く、覚えがある人もいるかと思います。その洞察では恋をしている人があれやこれやと非難されますが、一方のソクラテスは最終的には恋をしている人を擁護し礼賛します。ただ、その恋はいわゆる普通の恋愛とは全く違うものですが。詳しく語る力は私にはないので実際に読んでください。

 

その他いろいろ

承認といっても様々

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)

 

  だいぶ前に読んだので詳細は覚えてませんが、重いってのは承認を求めるところが偏ってるのでは、バランスをとるべきでは、みたいなことが書かれていた気がします。ヘーゲルの承認論とかアドラー心理学とかがちらちら出てきます。社会学・心理学への足掛けになるか。

自称「弱者」を取り巻く厄介さ

「弱者」とはだれか (PHP新書)

「弱者」とはだれか (PHP新書)

 

 「弱者」を名乗る人が猛威を振るい周囲を引っ掻き回す事例を挙げています。また、社会的に弱い立場とされる人たちへの適切な対処は(重い人間関係ではなしに)何なのかということも探っています。

 自称弱者の心境については以下もあります。

「負けた」教の信者たち - ニート・ひきこもり社会論 (中公新書ラクレ)

「負けた」教の信者たち - ニート・ひきこもり社会論 (中公新書ラクレ)

 

 

  現代の学生同士の関係に限ればさらにいくつかあった気がしますが、とりあえずここまでです。

 重い関係なんて視野狭窄の一種なんだと言ってしまえば終わりなんですが、その視野狭窄にも理由があるだろうというのはひとつ前の記事で書いたとおりです。しばしば、重い関係と「女生徒の感覚」はセットで現れます。その根拠を視野狭窄という言葉で片付けずに、もう少し詳細に分析できれば。

 こうした本と合わせて読むとよかった漫画や小説もあるのですがそれはまたの機会に。

 

 最後に、最近すごいなーと思った方のブログを貼らせてもらいます。「自助グループとマッチポンプサークラ」とか「自分の弱さを盾に取る人」とかが関係あるかなと思います。